自己破産の具体的な流れ~依頼してからの生活~
『自己破産の具体的な流れ~受任してから申立まで~』[リンク]の続きです。
今回は、自己破産がスムーズに進行するように、生活面で気を付けるべきことを取り上げます。
1.依頼してから破産手続開始決定まで
自己破産を弁護士に依頼した後、気を付けるべき重要なことがあります。
前の記事で書いたとおり、原則論では、破産の制度は、資産をお金に換えて、債権額に応じて債権者に配当するという制度といえます。
そのため、破産すると決めた時点の資産を維持保全することが重要です。
前の記事で、同時廃止手続になる場合があるとしましたが、それは破産手続開始決定の際に決定されることですので、受任から申立てまでの間に、財産を散逸させたり費消したりすると同時廃止手続にならない可能性が高まってしまいます。
その意味でも資産の維持保全はとても重要なのです。
したがって、最低限、次のことを厳守して頂くようにお願いしています。
① 新たな借り入れは厳禁
② 債権者への支払いは厳禁(ただし生活上必須な場合もありますのでご相談ください)
③ リースやローンで購入した物品(自動車等)を壊さない
①新たに借入れをした場合、返済する見込みがないのに借りたとして詐欺行為と言われるリスクがありますし、免責を受けられなくなる可能性があります。
②生活上必須な支払い(例えば合理的な範囲内の水道光熱費、家賃、携帯電話料金)などはともかく、特定の債権者だけに支払いをしてしまったような場合、偏波弁済といって、その返済が無効となり、破産手続の中で非常にやっかいな事態になる可能性があります。
③リースの場合にはその物件の所有者は債務者自身ではありません。リース料金の支払いができない状況でリース物件を壊してしまうと損害がいくらなのかという形でも揉めることになる可能性があります。
このほかにも注意すべきことはありますが、要するに、現在の資産状況を変化させないということが重要です。
お金を使っていいかどうか不安を感じた場合にはすぐに相談してもらいたいと思います。
ところで、自動車をローンで購入する方も多いと思います。
ローンが残っている状態で受任通知を出すと、通常、信販会社から車の返還(引き上げ)を要求されます。
信販会社が所有者として車検証に記載されているときは、引き上げの求めに応じるか、第三者にローンを支払ってもらって第三者が買い取るという流れになります。
また、車検証上、販売会社が所有者になっている場合でも、一定の場合には信販会社が引き上げをすることが認められる場合があります(最高裁平成29年12月7日判決)。
債務者が自動車を使用していて事故などで廃車となれば、その損害を賠償する必要も出てきますし、第三者に買い取ってもらうという方法も取れません。
生活上自動車を使い続けなければならない方は、より一層、事故に遭わないように注意する必要があります。
2.開始決定後から終結まで
無事破産の申立てをすると、1ヶ月もあれば破産手続開始決定となります。
申立書の内容だけでは破産の要件を充たすか不明であるとか、書類の内容が不明確だったりする場合には、裁判所から補充するように指示があります。
その指示に対応し、破産手続開始決定がなされてからのことについて記載します。
破産手続開始決定後に得た資産は、新得財産といって破産手続の中では取り扱われません。したがって、自身の資産として使うことができます。
もっとも、破産手続開始決定があったからといって自由気ままな生活を送ってしまうと、それが免責の審理において考慮される可能性があります。
特に、免責不許可事由があるけれども裁量で免責を認めてもらいたいという場合、破産手続開始決定を得た後の生活面も見られますので十分注意が必要です。
私が依頼を受けた場合、今後のお金の使い方についてはレシートを保管して大学ノートにその都度貼り付けておくことをお願いします。
自分のお金の使い方や使途について後で振り返ってみるということは生活の再建にとってとても重要なことですし、免責許可を得るためにも今は再建のために努力しているという行為の結果を示す意味もあります。
大変面倒なことをお願いしているとは思うのですが、今後のことを思うとぜひともやって頂きたいことです。
また、破産手続開始決定時の資産は、一定の範囲内であれば手元に残すことができる場合があります。
自由財産の拡張というのですが、残高がさほど多くない預貯金などは手元に残すことができる場合が多いです。
3.おわりに
知人から頼まれて保証人になってしまったとか、病気のため職に就けず借金が増えて行ってしまったとか、様々な方からご依頼を頂いてきました。
自己破産することに抵抗がある方もおられるかと思いますが、自己破産をしたことで以前は考えもできなかった前向きな毎日を送れるようになったというお手紙をくださった方もいます。
おひとりで悩まず、気軽に相談頂ければと思います。
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