養育費の計算方法・基本編
この記事をご覧の方はすでに「算定表」というものをご存知かもしれません。
算定表というのは婚姻費用や養育費を算出するにあたって双方の年収から一定の枠のある婚姻費用や養育費の額を表にまとめたものです。
裁判所のホームページでも公表されており、実務においては通常これが使用されます。
ただ、算定表は子どもが3人を超える場合や年収2000万円を超える場合については記載されていません。
年収2000万円を超える場合については、①頭打ちになるという考え方、②上限はないという考え方がありますが、②上限がないと考えた場合には計算式を用いて計算をする必要があります。
「基礎収入」「生活指数」から算出されますので簡単に説明します。
もっとも、これから下の文章が何を言っているのか分からなくても全然大丈夫です。難しい話はご相談頂ければ具体的な事情をお聞きして見込み額をお伝えいたしますので、お気軽にご相談ください。
算定表の計算(基礎収入)
以下では給与所得者の場合を想定しています。
事業主の場合は確定申告書で所得を確認することから始まりますが、収入から経費を控除した金額が所得ですので、本来経費として認められないような個人的な支出(接待交際費名目の飲食代など)については所得に加えて計算する必要があるなど、より深い考察が必要になります。
さて、基礎収入は総収入や手取りではなく、総収入に一定の割合(通常は34%~42%)を乗じて算出されます。
なぜこのようなことをするかというと、総収入の中には自分では自由に使えない部分が含まれていると考えられるからです。
つまり総収入の約4割は自分では自由に使えない部分ということになります。
支払う側にとっては自由に使えない金額の割合が高いほど養育費として支払う金額が低くなります。
逆に、もらう側にとってはこの割合が低い(自由に使える金額が多い)ほど、もらえる金額が高くなります。
自由に使えない部分を具体的にいうと、「公租公課」、「職業費」、「特別費」とされています。
職業費は、分かりやすくいうと収入を得るために必要な支出のことです。被服費や交通費、交際費などです。
特別費は、住居費や医療費など生活のために欠かせない費用と理解すると分かりやすいかもしれません。
「職業費」と「特別費」は具体的な事情によって異なる場合がありますから、安易に算定表を用いてしまうと適切ではない場合もあり得るのです。
算定表の計算(生活指数)
生活指数とは親の生活に必要な値を100とした場合における子どもの生活に必要な値のことです。
子どもが0~14歳までは62、15歳以降は85とされます。
2019年12月に改訂される前は14歳までは55、15歳以降は90とされていました。
改訂により14歳までの生活指数が増えたので、14歳までの養育費の額はあがりました。
逆に15歳以降は下がっていますので、養育費の額は下がっています。
算定表の計算(計算方法)
これらの値からまず義務者が子どもと同居しているとした場合に子どもに要する費用(生活費)を計算します。
その後、生活費を義務者と権利者でどのように負担するかを計算します。
義務者の負担額は年額で算出されますが、養育費は一般的に毎月支払うという合意なり決定なりがなされることが通常ですから、年額を12で割ることで月額が算出されます。
算定表は常に正しい?
いくらもらえるのか調べたくてこの記事をお読みいただいている方にとっては、上記説明はまどろっこしいかもしれませんが、上記のとおり具体的な事情によって変わってくるため、ここではあえて詳細な計算式は記載しません。
上記のとおり基礎収入を算定するための割合は具体的な事情によって変動しますし、毎年の年収額に大きく変化があるような場合にはどのようにするべきかという問題もあります。
算定表はあくまでも参考資料でありこの表を用いられることが多いことは事実ですが、あなたにとって適切であるかどうかは具体的事情によって異なるということです。
子どもが幼ければ支払期間も長期になります。支払期間が15年(180か月)だとして、毎月1万円違えば、合計で180万円もの差になるのです。
少しでも気になった方はまずはご相談を
内閣府も、令和元年11月に「子供の貧困対策に関する大綱」を発表し、その中で「養育費確保の促進」を掲げ、養育費の取り決めの重要性について記載しています。
経済的に苦しい生活となると子の教育にかけられる費用も相対的に少なくなり、子の進学・就職に影響を与えることがあります。
貧困の連鎖という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
経済的に苦しいと子の進学や就職に影響が生じ、その子が親になったときにはまたその子が貧困となり連鎖していくというものです。
この連鎖を断ち切ることが重要であり、そのための一つとして養育費の確保が重要なのです。
離婚さえできればいいと一時の感情で決めてしまうのではなく、子の将来のためにも、お電話頂ければと思います。
次回更新予定の記事は「養育費はいつまで?」です。
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