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選挙権について

アメリカ合衆国大統領選挙が社会的耳目を集めていますが、これを機に選挙権について再度考えてみましょう。

 

現在の日本国憲法では、成年者の普通選挙が憲法で保障されています。

普通選挙というのは制限選挙と対をなすもので、収入や地位と関わりなく、選挙権が認められるというものです。

また、平等選挙という言葉もあります。日本で女性にも選挙権が認められたのは1945年のこと。第二次世界大戦後に制定された日本国憲法を起点とします。

現代では選挙権について男女で差があることはなく、また収入や地位によって差別されません。これらは日本国憲法で明確にされています。

 

しかし、歴史的にみると意外と最近のことなんですね。

 

 

 

ところで、国会議員選挙がある度に、一票の格差問題がニュースになります。

 

投票権を有するすべての国民に投票用紙が配布されるのに、格差が出るのはどうしてでしょうか。

 

それは選挙の方法が関係しています。

 

法律は基本的に全国民を名宛人としています。北海道に住んでいようが沖縄に住んでいようが、法律は全国民が従うものとされます。

法律を制定する国会の構成員である国会議員も、全国民の奉仕者であり、一部の奉仕者ではありません。これも憲法で明記されています。

もっとも、日本全国においては、地域ごとに実情が異なります。

その地域ごとの実情も考慮して国会では法律の内容を検討する必要があります。

国会議員が一部の地域だけからしか選出されなかったら、地域の実情を国会で考慮してもらえるのだろうか、一部の地域のことしか考慮していないのではないか、という不安が生じてきてしまいます。

 

そのため、国会議員の立候補者を選挙区で分けて、その選挙区の中で当選した人を国会議員とする、という方法が考えられます。

 

しかし、人口は絶えず流動しています。死亡することもあれば、転勤や移住などで引っ越すこともあります。

そうなると選挙区の人口が変わってきてしまうわけです。

 

具体的に考えてみましょう。

Aという選挙区は人口90万人、Bという選挙区は人口30万人とします。

AもBもそれぞれ国会議員1名ずつ選出されるとした場合、A選挙区の投票権を持つ人の一票の価値は、B選挙区の価値の3分の1しかありません。

 

これを平等にするためには、Aからは議員3名、Bからは1名とすることが考えられます。

 

しかし、選挙の方法は法律で定めると憲法で規定されていますが、法律を制定するための調査をした結果が出る時期と、実際に法律が制定される時期にもタイムラグがあります。また、選挙区と当選人数を決めてから、実際に選挙が行われるまでにはタイムラグがあります。

その間にも人口は変動してしまいますから、厳密な意味での価値の平等はなかなか難しい問題です。

 

ただ、選挙というのは国会議員を選び、その国会議員が制定した法律に従って、行政が行われますから、国民の権利義務に重大な影響を与えるいわば出発点です。

民主主義国家では極めて重要なことですから、一票の格差が大きい状態は憲法が許容するものではありません。

 

そのため、一票の格差訴訟では、格差が一定以上ある場合は「違憲状態」という判断をします。

原則論でいえば、憲法に違反する法律に基づき行われた選挙は無効となるはずですが、無効としてしまうと法律を改正する国会を開けなかったり、莫大な費用が必要になるなど、問題が大きくなってしまいます。

そこで最高裁は「違憲状態」という判断にとどめ、選挙自体を無効にしたことはありません。

 

しかし憲法の番人である最高裁が、憲法に違反する選挙を無効にすることはないと考えられてしまうと、国会・政権与党の判断で自己に有利な選挙方法を選択するおそれが生じてしまいます。

 

これは極論かもしれませんが、最終的には我々国民が国家権力をきちんと監視していくということが重要だということなのでしょうね。

 

ということで、今回は選挙権について考えてみました。

 

少子高齢化の観点も踏まえると、世代間格差という問題も出てくるかもしれませんが、それはまた別の機会にでも。

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