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検察庁法改正関連

最近何かと話題の検察庁法改正絡みの時事ネタですが、法的にはどうかという観点から、私なりにまとめてみました。

 

端的にまとめたかったのですが、書き始めたら結局かなりの分量になってしまいました・・・汗

 

 

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[目次]

1.そもそもの始まり

 

2.検察官の定年と国家公務員の定年

 

3.優先関係

 

4.それでもなお国家公務員法の規定を適用できるのか?

 

5.三権分立に違反する

 

6.まとめ

 

7.おわりに

 

 

 

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1.そもそもの始まり

 

 

東京高検検事長の定年を、政府が、国家公務員法の規定を適用することによって延長させたことが始まりでした。

そこでまずは、検察官の定年について、国家公務員法の規定を適用することができるのか確認したいと思います。

 

 

 

2.検察官の定年と国家公務員の定年

 

 

検察庁法22条には次の規定があります。

 

「検事総長は、年齢が六十五年に達した時に、その他の検察官は年齢が六十三年に達した時に退官する。」

 

検事総長以外の検察官は63歳に達した時に退官すると明記されています。

 

普通に考えると、63歳になったら定年退職となり、定年を延長する規定も検察庁法にはありませんので延長することはできないことになります。

 

 

他方、国家公務員法を見てみましょう。

 

同法81条の2

第1項「職員は、法律に特別の定めのある場合を除き、定年に達したときは、定年に達した日以後における最初の三月三十一日…略…に退職する。」

第2項「前項の定年は六十年とする。以下略」

 

なお、以下略の部分ですが、一定の職員で人事院規則で定めるものは六十三年とする旨の規定があります。

そこで人事院規則を見てみると、六十三年とする職員は次のとおりであり、検察官は該当しません。

 

第三条 法第八十一条の二第二項第二号の規則で定める職員は、給与法に規定する行政職俸給表(二)の適用を受ける職員のうち、次に掲げる者とする。

一 守衛、巡視等の監視、警備等の業務に従事する者

二 用務員、労務作業員等の庁務又は労務に従事する者

 

以上より、法律をそのまま読む限り、

検事総長を除く検察官は63歳に達した時で、

国家公務員は原則60歳になった後に最初に迎える3月31日で、

それぞれ定年退職するということになります。

 

 

 

3.優先関係

 

 

もし、検察庁法の規定よりも、国家公務員法の規定が優先されるということになれば、国家公務員法では定年は60歳ですから、検察官も60歳で定年にならないとおかしいですね。

しかし、検事総長を除く検察官の定年はずっと63歳とされてきています。

この時点で、検察庁法の定めの方が優先されるということがわかると思います。

 

ただ、せっかくですので、念のため条文を確認してみますと、次の規定があります。

 

国家公務員法の附則第十三条

 

「一般職に属する職員に関し、その職務と責任の特殊性に基いて、この法律の特例を要する場合においては、別に法律又は人事院規則(人事院の所掌する事項以外の事項については、政令)を以て、これを規定することができる。但し、その特例は、この法律第一条の精神に反するものであつてはならない。」

 

「一般職に属する職員」という部分ですが、国家公務員には、一般職と特別職があり、特別職以外はすべて一般職となります(国家公務員法2条)。

特別職は限定列挙されており、検察官は特別職として掲げられておりませんので一般職ということになります。

 

検察庁法32条の2[本法と国家公務員法との関係]は次のとおり定めています。

 

「この法律…略…第二十二条…略…の規定は、国家公務員法附則第十三条の規定により、検察官の職務と責任の特殊性に基いて、同法の特例を定めたものとする。」

 

はい。

 

検察庁法二十二条というのは、先に示した検察官の定年について定めた規定です。

検事総長を除く検察官の定年が年齢63年に達した時とする検察庁法の規定は、国家公務員法の特例であることを検察庁法自体が明らかにしているのです。

「職務と責任の特殊性」という同じ言葉遣いが使われていることからも明らかです。

したがって、国家公務員法の定年に関する規定を、検察官に適用することができないことはあまりにも明らかですね。

 

 

 

4.それでもなお国家公務員法の規定を適用できるのか?

 

 

このように国家公務員法の定年に関する規定を検察官に適用することは不可能であるというのが私見ですが、今般、政府は国家公務員法の規定に基づき、検事長の定年の延長を行いました。

 

閣議決定の議事録

「本件は,同検事長を管内で遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査・公判に引き続き対応させるため,国家公務員法の規定に基づき,6か月勤務延長するものでございます。」

https://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/2020/kakugi-2020013101.html#minutes

 

 

そこで、改めて定年延長の規定を見てみます。

 

定年延長に関する国家公務員法の規定は次のとおり定めています。

長いのですが引用します。

 

81条の3

第1項「任命権者は、定年に達した職員が前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において、その職員の職務の特殊性又はその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその職員の職務の遂行上の特別の事情からみてその退職により公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるときは、同項の規定にかかわらず、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して一年を超えない範囲内で期限を定め、その職員を当該職務に従事させるため引き続いて勤務させることができる。」

第2項「任命権者は、前項の期限又はこの項により延長された期限が到来する場合において、前項の事由が引き続き存すると認められる十分な理由があるときは、人事院の承認を得て、一年を超えない範囲内で期限を延長することができる。ただし、その期限は、その職員に係る定年退職日の翌日から起算して三年を超えることができない。」

 

まず、「前条第一項の規定により退職すべきこととなる場合において」と規定されています。

 

「前条第一項」というのは、先に示した国家公務員は原則60歳に達した日以後に最初に迎える3月31日で定年退職するという規定です。

 

したがって、国家公務員法による定年延長は、国家公務員法81条の2第1項の規定で退職する場合に適用できるということがわかります。

 

しかし、先に述べたように、検察官の定年退職は、国家公務員法81条の2第1項の規定に基づくものではなく、検察庁法22条の規定に基づくものです。

国家公務員法81条の2第1項に「法律に特別の定めのある場合を除き」と規定されており、検察庁法22条はここにいう「法律に特別の定め」に該当します。

 

したがって、国家公務員法81条の3を適用する前提としての同条の2第1項はそもそも検察官には適用され得ませんから、検察官の定年をこれで延長させるというのは無理というものです。

 

 

 

次に、「公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由があるとき」との部分です。

検察官の職務で重要なことは、捜査を行い、法と証拠に基づき起訴不起訴の決定をすることです。

罪を犯したと疑うに足りる証拠があるか、訴訟を遂行して有罪の判決を得るための十分な証拠があるか等、証拠に基づき法の定めを遂行するということが重要であり、検察官の個人の性格や人柄が重視されてはなりません。

法に基づき厳正に行われるべき職務が、人によって左右されては困りますよね。

 

閣議では、「同検事長を管内で遂行している重大かつ複雑困難事件の捜査・公判に引き続き対応させる」ことを理由として延長が行われたわけですが、同検事長が引き続き対応しなければ「公務の運営に著しい支障が生ずると認められる十分な理由」があるというのはどのような場合なのでしょう。

 

私にはまったく想像できない世界のことなのかもしれませんが、同検事長は5月21日に内閣総理大臣宛に辞表を出したと報道されており、翌22日の閣議で承認される見通しという報道がなされています。

 

辞表提出から承認までのスピード感は尋常ではなく、「公務に著しい支障」が生じないのか、国民として不安になります。

 

これほどのスピード感で辞めさせることができるのであれば、定年を延長させなければならなかったはずの「公務に著しい支障が生ずる十分な理由」はもともとなかったのではないかとの疑いが生じてしまいます。

 

したがって、百歩、いや一千万歩譲って、一般論として国家公務員の定年延長の規定が検察官にも適用されるとしても、この規定に基づいて検事長の定年を延長させるというのは無理があったと言わざるを得ません。

 

 

 

5.三権分立に違反する

 

 

このように内閣が行った定年延長は、法律に基づかずに行ったものと言わざるを得ません。

もしくは、勝手に法律を作ったかのどちらかです。

 

ここで憲法の条文を見てみましょう。

 

憲法73

内閣は、他の一般行政事務の他、左の事務を行う。

  一 法律を誠実に執行し、国務を総理すること

  二~三 略

  四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌握すること

  五 略

  六 この憲法および法律の規定を実施するために、政令を制定すること。(但書は略)

 

このように内閣は、法律に基づいて行政を行わなければなりません。

 

換言すれば、行政とは法律の執行を意味します。

行政は法に基づいて行うということが法治国家では当然のこととされています(法律による行政の原理)。

 

そして法律は、国会が唯一の立法機関です(憲法41条)

 

 

ちなみに立法とは「一般的抽象的法規範の定立」をいうとされています

 

そうすると、今回の内閣の行為は、法律がないのに定年を延長させることを可能としたのですから、憲法で定められた内閣の権限を逸脱する行為であったと言わざるを得ません。

 

法律の解釈を変更したという言い訳がおよそ不可能であることは先に述べた点からお分かり頂けると思います。

 

解釈を変更したというよりは、本来適用することができない法律を、適用することができるとして勝手に判断して人事を行ったというのであれば、これはもはや新たな法律を勝手に作った、つまり立法行為にほかならず、国会の権限を奪うようなものです。

 

 

 

6.まとめ

 

 

 

検察官の定年を国家公務員法の規定を根拠に延長することはできるの?

 

→ 無理

 

今回の定年の延長って憲法上大丈夫なの?

 

→ 大問題

 

 

7.おわりに

 

 

検察庁法改正案の反対運動が活発になったことで再び日の目を浴びることになった今回の定年延長問題。

 

三権分立という大原則から逸脱し、憲法に違反する行為を行った内閣の責任はどのように果たされるのか。

 

今後も注視していきたいと思います。

 

 

 

 

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